
ウーゴ・フォスコロの肖像
作品情報
ストーリー
この青年は、尖筆で木の幹の樹皮に名前を刻んでいる。名はテレーザ、刻んでいるのは詩人ウーゴ・フォスコロ、腰を据えたときおよそ23歳だった。
フォスコロはフランスの後ろ盾で生まれたイタリアの諸共和国で兵士として勤めたのち、ミラノに出てきた。そして1802年、そのミラノで書簡体小説『ヤコポ・オルティスの最後の手紙』の完成版を世に出す。主人公が手に入らないテレーザを恋う物語である。ミラノの読者はこの名を、詩人ヴィンチェンツォ・モンティの妻テレーザ・ピクレルに重ねた。フォスコロ自身が報われぬ思いを寄せた相手だった。
アッピアーニは肖像画を、神話画よりも速く、より温かい筆で描いた。外された襟もと、乱れたままの髪にそれが出ている。美術館の記録はこの絵の銘記として、幹に刻まれたその一語だけを挙げている。


