
聖母子
作品情報
ストーリー
この聖母子には、美術館が答えを出さずに記録している問いがある。1982年、金地に打たれた刻印模様を研究していた美術史家モイミール・フリンタが、イチリオ・フェデリコ・ヨーニについての論文を発表した。ヨーニは20世紀初めのシエナの修復家で、古いシエナ派の様式で新しい板絵を描き、その一部は本物の古画として売られた人物である。
論文のなかでフリンタは、この絵と多くの点で一致する聖母の古い写真に触れている。写真には、1919年にローマの画商パオロ・パオリーニが所有していたという書き込みがあった。フリンタは、写真に写っているのが加筆された状態のこの板絵なのか、まったく別の絵なのか、二つの可能性を挙げるにとどめた。
もう一つの古い記録は、1926年に没したイタリアの美術史家ジャコモ・デ・ニコラの鑑定書である。フィレンツェのグラッツィーニ氏の所有だったころからこの絵を知っている、と彼は書いた。1936年、ローマの画商アルド・ヤンドーロが16,200ドルでボストン美術館に売り、美術館はいまもリッポ・メンミへの帰属として扱っている。