
Wassily Kandinsky · PD
即興21a
作品情報
ストーリー
このカンヴァスの出発点は、カンディンスキー自身が描いた小さなガラス絵《太陽とともに》だった。ガラス絵では、ロシア風の玉ねぎ屋根を戴いた二つの丘、大きくのけぞる男女、斜面を駆け上がる三人の騎手、上空の太陽、そして右手には黒い雲の下で三人が漕ぐ小舟が、はっきり読み取れる。1911年、彼はこの図柄をカンヴァスに移し、人物の輪郭をぼかし、ガラス絵の鮮やかな色を白っぽい灰色で覆った。ローズ=キャロル・ウォッシュトン・ロングらの研究者は、太陽と暗雲の対立、荒波にもまれる小舟から、これを終末の幻視の一つと読む。一方カンディンスキー本人は、ニューヨークのグッゲンハイム美術館にある1913年の近しい作品《小さな喜び》について、ずっと穏やかな言葉を残した。自分を解き放ち、たくさんの小さな喜びをカンヴァスに注ぎたかった。黒い雲はかすかな内なる沸き立ちを添えるだけで、痛ましい響きにはならなかった、と。




