
Jean-Auguste-Dominique Ingres · PD
ジョゼフ=アントワーヌ・モルテド
作品情報
ストーリー
アングルがこの肖像をローマで描いたのは1810年ごろ、街がナポレオンの支配下にあり、フランスから来た役人であふれていた頃である。ジョゼフ=アントワーヌ・モルテドもその一人で、コルシカ出身の商人として、1803年から1814年にナポレオンの権力が崩れるまでローマの郵便を取り仕切っていた。名を上げようとしていた若いアングルは、こうした役人からの注文を受けていた。モルテドの背後には、誰もが知る遺跡、アッピア街道とコロッセオを据え、その上に重く垂れた灰色の空を置いた。落ち着いた自信ありげな顔つきと、その空とが対照をなす。彼はこちらへわずかに身を向け、暗い目で静かにこちらを見つめ、飾りのない黒い服をまとう。ローマでの職を彼に与えた帝国は、この制作からわずか四年で消え去っていた。




