
Annibale Carracci · PD
豆を食べる男
作品情報
ストーリー
口いっぱいに豆をほおばった、その一瞬。カラッチが描いたのは、英雄でも聖人でもない、ひとりの貧しい農夫が食事をとる姿でした。1580年代のことです。当時の絵画は理想化された神々や聖書の場面が中心で、これほどありふれた庶民の食卓を正面から描くのは珍しいことでした。粗末なテーブルには、豆の器のほかに黒っぽいパン、刻んだ葱、水差しが並びます。男はスプーンを口に運びながら、ふと顔を上げてこちらを見ます。飾らないその生々しさは、のちにカラヴァッジョが押し進める写実の先ぶれとも言えます。ボローニャに生まれたカラッチが、目の前の現実をそのまま見つめた一枚です。




