
ファルネーゼの小箱
作品情報
ストーリー
この小箱は1540年代のローマで作り始められ、完成までに20年近くかかりました。注文主は教皇パウルス3世の孫、アレッサンドロ・ファルネーゼ枢機卿です。いちばんの見どころは、側面にはめ込まれた六つの楕円形の水晶板です。宝石彫刻師のジョヴァンニ・ベルナルディが、主に画家ペリーノ・デル・ヴァーガの素描をもとに、ケンタウロスやアマゾネスとの戦い、猪狩り、海戦の場面を彫り込みました。透明な水晶に刻まれた図柄は、つや消しの淡い素描のように見えます。長い側面にある楕円の一つ、その下の縁には、ベルナルディ自身の名前も刻まれています。ベルナルディは1553年に亡くなり、ラピスラズリをはめた銀鍍金の本体は、フィレンツェ出身の金細工師マンノ・ディ・バスティアーノ・スバッリが1561年ごろに仕上げました。同じ時代に芸術家列伝を書いたジョルジョ・ヴァザーリは、これほど完璧な作品はかつてなかったと記しています。蓋の割れたペディメントの中央には、ヘスペリデスの林檎を手にした髭のヘラクレスが座っています。何を納めるための箱だったのかは、今もわかっていません。1565年、枢機卿はこの小箱を、甥の花嫁となったポルトガルのマリアに結婚祝いとして贈りました。
