
J. M. W. Turner, The Fish Market at Hastings Beach, 1810. Wikimedia Commons. · PD
ヘイスティングズ海岸の魚市場
作品情報
ストーリー
1810年、ヘイスティングスの浜辺は最前線だった。イギリスは長年ナポレオンと戦争を続けており、フランスにもっとも近いこのサセックスの海岸には、いつ来るとも知れぬ侵攻に備え、ずんぐりしたマーテロ塔がずらりと築かれたばかりだった。ターナーはそうした恐れを一切描かない。描くのはありふれた仕事の朝である。漁船が小石の浜に引き上げられ、荷馬車が獲物を運び去り、男も女も柳の籠を手に集まって売り買いする。背後の町は急速に姿を変え、流行の海辺の保養地になりつつあったが、漁師たちは相変わらず岸で働いていた。ターナーの目は別荘ではなく、海と労働に注がれている。この絵を彼はロンドンのクイーン・アン・ストリートにある自分の画廊で公開した。ロイヤル・アカデミーには出していない。同じ年の七月、絵はサセックスの富裕な地主で下院議員、奇人として知られたジョン・フラーが画家から直に買い取った。ターナーはのちに彼のためにこの州の風景の連作を描くことになる。




