
Didier Descouens · PD
新月、または「私は舟を失くした、あなたも輪っかをもらえない」
作品情報
ストーリー
1840年、ターナーは65歳。晩年の多くをケント海岸のマーゲートで過ごし、この浜辺もそこで描いた。潮の引いた濡れた砂の上、まだ明るい夕方の空に、細い新月が昇っている。長くて可笑しな題名は、浜辺の子どもの喧嘩を書きとめたものだ。一人が小舟をなくし、もう一人に輪を貸すまいと言い張っている。同じ年のロイヤル・アカデミー展で、ターナーはあの恐ろしい奴隷船も掛けていた。これほどの画家がこんな小さな出来事にも筆をとることを、批評家は訝しがった。人物は、水の照り返す光の中に置かれた数筆の絵具にすぎない。




