
Raphael · PD
妊婦
作品情報
ストーリー
1505年ごろ、若きラファエロはフィレンツェで、名の知られていない一人の女を描いた。身重の女、という題のとおり、彼女は片手をふっくらとした腹の上にそっと置いている。誰なのかは今も分からず、裕福な市民の妻だろうと推し量られるだけである。飾りけを抑えた黒っぽい衣に、白い胸もと。顔にはこれといった劇的な表情はなく、静かにこちらを見ている。ラファエロはこの頃、レオナルドの《モナ・リザ》に見られる落ち着いた三角形の構図や、内から満ちるような柔らかさを吸収していた。腹に添えられた手の指先に、これから母になる者のかすかな気配がこもっている。




