
Paul Cézanne · PD
バラ色の背景の芸術家の肖像
作品情報
ストーリー
セザンヌがこの自画像を描いたのは1875年ごろ、第一回印象派展に三点を出品してパリの批評家からとりわけ嘲笑された翌年のことだ。こちらを見返す男の顔から、それはうかがえない。気取ったところも、画家らしい装いも、見せびらかす絵筆もない。あるのは、簡素な上着を着た、髪の薄くなりかけた用心深い人物と、平らなバラ色の壁だけだ。この暖かいバラ色は彼には珍しい。たいてい彼は借家のありふれた模様の壁紙を背にして自分を描き、その反復に頭のうしろの空間を整えさせた。およそ50年のあいだに彼は25点ほどの自画像を残したが、そのどれでも自分を美化していない。ここでは顔をわずかに横へ向け、ほかのほとんどの自画像に共通する、用心深い横目のまなざしがこちらに届く。




