
Raphael · PD
トンマーゾ・インギラーミ(通称フェードラ)の肖像
作品情報
ストーリー
トンマーゾ・インギラーミは「フェドラ」と呼ばれた。若い頃、セネカの悲劇でパイドラを演じた際、上演が途中で止まってしまった舞台の上で、とっさにラテン語の詩を即興でつないでみせたからだという。当代随一の雄弁家とされた人物である。ラファエロは彼を机に向かわせ、ペンを紙の上で止め、視線を斜め上へ向けて描いた。まるで、いま口にすべき一句を宙で探しているかのようだ。インギラーミは1510年にヴァチカン図書館長に任じられており、肖像もこの頃のものとされる。赤い革装の本から書き写していた手が、静かに止まっている。




