
© José Luiz Bernardes Ribeiro · PD
茨の冠
作品情報
ストーリー
ティツィアーノは80歳を超えてなお絵筆を握り、若い頃に描いた主題を、まったく違う手つきで描き直すことがあった。この『荊冠』もその一つで、パリに伝わる約30年前の同じ構図を、晩年に改めて取り上げたものだ。兵士たちが棒でキリストの頭に茨の冠を押しつける残酷な場面が、暗い闇のなかで揺らめく。輪郭は溶け、絵具は指でこすりつけたようにおぼろになり、光だけが人体の上をよぎる。近くで見れば混沌とした絵具の塊が、離れると苦痛の一瞬に結ばれる。松明の赤い炎が、画面の唯一のはっきりした光源になっている。




