
Didier Descouens · PD
谷
作品情報
ストーリー
カオールのアンリ=マルタン美術館にある、厚紙に油彩で描かれた小さな風景画です。美術館はこれをクールベによるフォンテーヌブローの森の風景とし、制作時期は19世紀後半とするにとどめています。高いところから暗い木立ごしに谷を見下ろすと、向かいのむき出しの明るい斜面に、低い陽が当たっています。そのころ、パリの南東に広がるこの森は大きく変わりつつありました。1849年8月にパリから鉄道が通じ、駅馬車で七時間かかった道のりが一時間半になって、日帰りの行楽客が押し寄せたのです。すでに1842年から、ナポレオン軍の元兵士クロード=フランソワ・ドヌクールが木や岩に青い印を描き、散策路を案内していました。この森では何十年も前から画家たちが制作しており、人出のせいで土地の静けさや野趣が失われると感じる者もいました。この絵の中には、人の姿はひとつも見当たりません。




