
Hans Memling · PD
聖母子
作品情報
ストーリー
1470年代のブルッヘは北ヨーロッパでも指折りの富裕な都市で、イタリアの銀行家や商人が屋敷を構える交易の中心地だった。ハンス・メムリンクはそこで最も引く手あまたの画家で、街の高額納税者に名を連ねるほど豊かだった。彼が手がけたのは大きな祭壇画ばかりではない。この板絵はごく小さく、わずか十八センチほどで、教会ではなく私室のために描かれた。聖母が幼子に乳を含ませる、静かで親密な情景である。こうした信心の小画像は寝台の上に掛けられ、夫婦への祝福や日々の祈りのよりどころとされることが多かった。乳を飲む幼子は、彼がまことに人であったこと、ありふれた赤子としてこの世に生まれたことを示す古い印だ。この絵は1930年代に個人蔵からニューヨークへ渡った。




