
ヴェールの聖母
作品情報
ストーリー
幼子は画面の下端に横たわり、組んだ腕に頭をのせて、口を開けたまま眠っている。その裸の子の上に、聖母が目を伏せて身をかがめる。右手は二本の指で透けるヴェールをつまんでいるが、ヴェールはほとんど見えず、淡い三角形がかすかに浮かぶだけだ。左手には灰緑色の布を握っている。その手の陰から白髪のヨセフがのぞき、右側の闇には天使がほとんど溶け込んでいる。セバスティアーノはこれを油彩で、スレートと呼ばれる粘板岩の板に描いた。1568年には、画家で伝記作家のヴァザーリが、幼子を布で覆う聖母の絵をアレッサンドロ・ファルネーゼ枢機卿が所蔵していると記しており、その記述はこの作品に結びつけられている。
1943年の秋、モンテ・カッシーノ修道院に避難していたナポリの美術館の絵画は、ドイツ軍のヘルマン・ゲーリング師団によってスポレート近くの倉庫へ運ばれた。そこで将校たちは六つの木箱を開け、ゲーリングへの贈り物として何点かの絵を抜き取った。この絵は57番の箱から出されたものだ。戦後、オーストリアのアルタウスゼー岩塩坑で見つかったとき、聖母の顔は酸化した層の下にほとんど消えていた。回収を率いたイタリアの担当官ロドルフォ・シヴィエロは、いちばん心を痛めたのがこの絵だったと書いている。1947年8月、イタリアへ戻る途中のボルツァーノで、フィレンツェから来た二人の修復家ロ・ヴッロとソコロフが、その結晶化した層を取り除いた。





