
Hans Holbein the Younger · PD
ジェーン・スモール夫人(旧姓ペンバートン夫人)の肖像細密画
作品情報
ストーリー
イングランドで細密肖像、いわゆるミニアチュールが描かれるようになって、このときまだ十年ほどしか経っていなかった。写本装飾の技から枝分かれした小さな画面で、それまでは宮廷の人間のためにほとんど独占的に作られている。ホルバインはヘンリー八世の周辺で働いていた。アン・ブーリンが失脚した年にあたる。ところが描かれた女性は、その世界とは関わりがない。ノーサンプトンシャーの郷紳の娘で、ロンドンの織物商の妻、ジェーン・スモール。スモール家はシティのホルバインの住まいのすぐ近くに暮らしていた。平らな青を背に、黒と白の装い、指のあいだに赤い花を一輪、胸もとに麦の穂を二本。何のために描かれたのかは分かっていない。ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館は1536年ごろとするが、年齢を23歳と記す銘を根拠に1540年前後と考える人もいる。羊皮紙の裏には、台紙として使われたトランプの札がある。




