
岩から水が湧く奇跡のあとのモーセとイスラエルの民
作品情報
ストーリー
これは布に描かれた絵で、それだけでも珍しい。1520年代のネーデルラントでは、壁に大きな絵を掛けたいがタピスリーには手が届かないという注文主が、膠で溶いたテンペラで描いた亜麻布を代わりに吊るすことがあった。安価なぶん傷みやすく、色も年月とともに暗くなりがちで、残っているものはわずかしかない。版画家として名高いルーカス・ファン・レイデンが遺した絵画は15点ほどにすぎず、これはそのひとつである。
題材は旧約聖書から取られている。荒野で渇きに苦しむイスラエルの民が不満を訴え、モーセは神に命じられて杖で岩を打ち、そこから水がほとばしる。ルーカスが描いたのは、その奇跡がすでに起きたあとの旅人たちの姿である。そして岩そのものに、年号と頭文字、1527とLを書き入れた。
1657年までに、この布絵はおそらくローマのボルゲーゼ家のコレクションにあった。1900年にはニュルンベルクのゲルマン国立博物館がミュンヘンの美術市場で購入し、1954年、同館はニューヨークの画廊を通じてこれをボストン美術館に売却した。




