
Anthony van Dyck · PD
ヘンリエッタ・マリア王妃 (1609-69)
作品情報
ストーリー
ヴァン・ダイクがロンドンに着いたのは1632年の春で、7月にはナイトに叙せられた。新しい主人のために最初に手がけた仕事のひとつが、王妃をひとりで描くことだった。ヘンリエッタ・マリアは22歳、フランス生まれのカトリックで、チャールズ1世と結婚して七年目にあたる。ロイヤル・コレクションは、これをヴァン・ダイクがイングランドで描いた王妃の単独肖像の最初のものと見ている。ここから型ができた。本人の手によるものと工房の手によるものと、異版が次々に続き、だからこの顔の別版がイギリスの邸宅にいくつも残っている。見どころは衣裳のほうにある。渡英直後の肖像画では、のちに省いていく細部をまだ律儀に写していたからだ。銀青色の絹には小さな波形の切れ込みがびっしり入れられて光を砕き、カーネーション色のリボンが冷たい色調を和らげ、袖口のレースは硬い鋸歯となって立ち上がっている。




