
Frans Hals · PD
グラスと錫の水差しを持つ少年
作品情報
ストーリー
皿ほどの大きさしかない、この円形の板絵は、1626年ごろのハールレムで、ひと組の連作の一枚として掛けられていた。フランス・ハルスは五感を、身近な子どもたちのふとした仕草として描き分けており、杯を傾けるこの少年は「味覚」にあたる。対をなすのは笛を持つ少年で、そちらは「聴覚」を担う。当時のハールレムでは、こうした顔ひとつだけを描いた小品がさかんに売り買いされていた。手早く、安く仕上げ、買い手を思わず笑わせるための絵である。その速さは今も画面に残っている。襟は濡れた絵具のひとはけ、杯の葡萄酒は光のしみ、笑いはかたちに固まる前の一瞬でとらえられている。ハルスは少年に名前を与えなかった。買い手が求めたのは「味覚」という観念であり、それには陽気な顔でありさえすればよかったからだ。




